ソローキン(1889-1968年アメリカの社会学者)は「愛-その力と方法」という著書の序文でこんなことを述べている。
即物的な五感や我々の理性は断固として愛の力を信じようとはしない。愛は我々にはまるで幻影のように見える。我々は愛を自己欺嘩、人間の知性を麻痺させるもの唯心的な考え非科学的な妄想などと呼び愛の力を証明しようとする理論にはことごとく反対しようとする。
愛が他の力の形をとって人間の行動や人柄を決定し、生物としての人間のあり方や社会、道徳、精神などの進化の過程に影響を与え歴史の流れを方向づけ社会のしくみや文化を形成するなど確固たる働きをするということを証明しようとする理論には我々は頭からことごとく反対しようとする。
だが事実はその通りなのだとソローキンは科学的な研究で私たちに証明して見せている。もしあなたが数字で表される存在しか信じられないとしたらなんと恥かしいことだろう。そしてあなたがその目で計れるものだけに心を奪われているとしたらなんとお気の毒なことだろう。
というのも私は計ることのできないものに夢中だからだ。私の心を虜にしているのは様々な夢であって今目の前にある物だけではない。目に見えるものも悪いとはいわない。私にも見えるし、そのお気持ちも分かる。
あなたが見える物に物差しを当てて一生を過ごそうとお望みだったらそうなさればいい。それも結構なことだ。ただ私は現実以外のものに心を寄せているというだけのことである。私達に見えないことや触れられないこと、感じられないことなど理解を超えていることが世の中にはたくさんあるのだ。
私たちは人間は現実という箱のなかに閉じこめられているものだと思い込んでいるが決してそうではない。ときにはドアを開けて外をみてみよう。どんなに多くの物がそこにあるかわかるだろう。今日は夢だったものが明日は現実になる。それなのに私たちは夢を見ることを忘れてしまっている。