私たちは力の入れどころを間違えている

愛を学ぶのはとても楽しいことである。しかし5年前にはじめて「愛の教室」を開講したころ、私は非常に孤独だった。実際、いまでも忘れることができないほどだ。あるとき私は、他の大学で私と同じような研究をしているひとりの先生と議論したことがあった。

私は「愛は生き方をかえるものだ」と主張し、相手の先生は「愛は情である」と考えていた。私が自分の考えを口角あわをとばして語り終わったところ、かの先生は私に向かってこういった。

「君はまったく浮世ばなれしているよ」”浮世ばなれ人間”という奇妙なレッテルをはられたのは、私の知るかぎりではおそらく私ひとりだけのようだが、それもまあ、なかなか粋なものだと思う。それに、このごろは私もそれほど孤立しているというわけでもなくなってきた。というのは、愛情に目を向けて、愛の研究をする人がふえてきているからである。

私の目をひらかせてくれた大事なできごとのひとつに、チャールズ・E・ジルバーマンの著書「教室の危機」との出あいがある。これはすばらしい本だから、まだお読みでなかったら読まれるとよい。

おそらく教育界でも最も意義ある書物の一冊ということになるのではないかと思う。これはすでにベストセラーになっているが、子供をもつひとはもちろん、子供に関心をもっておられる方はジルバーマンの著書をぜひ読んでおくべきだ。どなたにも役立つはずである。

この本は、偉大な社会学者であり心理学者であるチャールズ・E・ジルバーマンが、カーネギー財団から3年間の奨学資金を受け、その主旨にもとづいて教育の現状を調査した結果、書いたものである、

氏は結論として、アメリカの教育がすべてのひとを対象としていることを思えば、こと読み書き、算数を教えることなどに関するかぎりは、かなりうまくこなしていると述べておられる。私たちは読み書きを教えることにかけてはなかなかいい腕をもっているようだ。

しかし、人間であるためにはどうしたらいいのかということを教えるのは、ひどく不得手なのである。このことは、ちょっとまわりを見まわしてみればすぐにわかる。私たちは明らかに、力の入れどころを間違えている。

— posted by Self at 06:47 pm